正直に言えば、今まで桜井さんと杉山さんをお見かけしても、こちらから声をかけることができなかった。映画を観たら、これからはどこで会っても笑顔で「こんにちは」と声をかけられる。いやそうせずにはおれないだろうと思った。そんな映画なのだ。
「ショージとタカオ」の2人が暗中模索の人生なら、この映画を制作した井手さんもまた、同じ地平を歩き続けている暗中模索の人生であって、その「孤独」の深遠に向き合い続けながら、きっと絞り出すような思いで完成させたこの映画は、だからこそ、観る人の胸を深く打つ。
明るいショージさんが夜中に窓を開けて飛び降りようとした話を泣きながら奥様がしているシーンを観て、つくづく人は一人では生きられないと感じました。冤罪は怖いです。それを認めないのは一体何のためなのか? 人の命よりも重たいものが他にあるのか? と憤りを覚えます。私もくじけずに頑張ろうと思いました。
布川事件が起きた日のアリバイを聞いた裁判官はショージに「こんな大事な日のことを覚えていないのか!」と声を荒らげたという。無実の人にとって、なんでこの日が「大事な日」なんだ。……そんなショージとタカオの人生の大事な日々を奪ったのは誰なんだ! 社会に出てからの大事な日々を、なお奪い去ったのはどいつだ!
2人がなにくそで生きた14年分の汗の臭いがようしゃなく伝わってくる。ちょっとおかしい。笑ってしまう。でもこの人たちは無実の罪で29年も刑務所にいたのだ。その事実となにげない日常風景との想像を絶する落差に狼狽しながら見終わって、私は新月の蟹のように身が詰まった。
私も、この事件の弁護人の方々の傍で、仕事をしていた時期があります。その不屈の精神と、細密で、豊かな創造に満ちた弁護に脱帽です。再審勝利を、祈念すると同時に、一人でも多くの人にこの映像を観ていただきたい。
よくある生真面目すぎる作品かと思いきや、2人の魅力的なキャラクターが映画を動かし始める秀作。29年獄中にいた2人が社会復帰するに当たり、冤罪の被害者意識よりも、豊かな人間性にカメラが引き寄せられ、生活者としての視点が前面に出始めるのが良い。それまでの人生を取り返す如き生活を営む喜びが魅力的な分だけ過去の苦しみも浮かび上がってくる。
29年もの歳月を刑務所で過ごした2人が、失った時間を必死にとりもどそうと前を向く日々の姿に涙が止まらない。普段は弱音を吐かず明るく国家権力と闘い続ける桜井さんと杉山さんの、見たこともない表情や言葉に、改めて冤罪事件の罪深さを感じ体が震えた。
「究極的な状況下に置かれたときでも、最も揺るぎないのは誠実で真っ直ぐな意志と温かい人との繋がりなんだとしみじみ思いました。震災後で尚更、明日を生きる力をもらいました。エンディングの曲もナイス!」 (Twitterより)
「笑って泣きました。ショージさんとタカオさんの明るさや前向きさに、こちらが力をもらった気持ちです。」 (30代 女性 会社員)
「ものすごい人間力を感じました。お2人のたくましさとそれを支え続けた人々の強さに感動しました。」 (50代 女性 )
「『真昼の暗黒』とは異なった意味で、静かに司法の罪悪を告発する立派な映画に仕上がったと思います。」 (50代 男性)
「とても衝撃的で驚きました。検察という組織にある黒い部分というのが印象に残っていますが、それ以外にも、ふたりが何十年も無実の罪と闘ってきたその努力や苦労などが伝わってきて、忘れられない映画になりました。」 (20代 男性 法学部学生)
「“カッコイイ大人” 20歳の時に捕まり、今まであきらめずに訴え続ける姿に感動しました。壁の外に出て再審を請求している時、心が揺らいだという正直な気持ちなど、リアルだなと思いました。」 (20代 女性 学生)
「ショージとタカオ観てきた。長い! けど人生について考えさせられた。今に満足できない人、自分が何したいのか分からない人にオススメ」 (Twitterより)